時は夏をかけめぐり、
秋が来たのに気づいたのは、
黄金の香りが
小さなこの界隈をすっぽり囲った時でした。
庭にでんと居すわり、
どうどうと咲き誇る金木犀は、
すっかり我が家の顔です。
夏までは葉を生い茂り、着々と支度しつつも、
沈黙を守った彼女は、
前触れもなくいきなり演奏を始めるのです。

香りのセレナーデは、
きらきらと輝くメロディとなり、
回りを巻きこみながら、
恋心を打ち明けます…
彼女は、ちょっとばかり
気位が高いので、
言葉のないメッセージを、
黄金の香りにたくすのです。
甘い甘い思いは誰に届けたの?
友だちの秋風と
こっそり話していたのは何だったの?
夜には、泣き騒ぐ虫たちの声に、
静けさを感じられないほどだと驚き、
南国に霜が降りるころまでの
長い長い秋は、もうとおに来ていました。

